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2008年5月

フェイル・セイフ~未知への飛行~

出し抜けシネマ論⑨~これがホントの苦渋の決断~

Failsafe 『十二人の怒れる男』は密室サスペンスの傑作にして最高峰でしょう。しかも、監督のシドニー・ルメットはこれが長編デビュー作と言うからタダものじゃない。

『フェイル・セイフ~未知への飛行』はそんなルメットが1964年に撮った作品で、毛色はだいぶ違うものの、密室劇の秀作。この人、けっこういろんなタイプの映画を撮っているんですけど、やはりこうした社会派サスペンスでこそ、匠の手になる日本刀のような切れ味を発揮する監督だと思います。

『フェイル・セイフ』の舞台はアメリカとソ連が核をちらつかせて睨み合う冷戦の時代。ちょっとしたシステムの故障と当時に、ソ連側が新型の妨害電波を放つという不運が重なって、水爆を搭載した米軍機に「モスクワを壊滅せよ」という命令が下ってしまいます。Img_0114_2 

もちろん、アメリカ側に敵意はなく、大統領もソ連のトップとホットラインで密に連絡を取り合いながら、最悪のシナリオの阻止に努めます。

「いったん命令が出されてから5分が経過すると、口頭での命令変更はいっさい無効となる」という設定が秀逸。つまり、一定時間が経過すると、敵側が大統領の声をマネして架空の命令を偽装する恐れがある……そのため、大統領が命じた作戦であっても、5分経過すると、その大統領ですら口頭での指示変更はできない!

Img_0118 大統領もこの爆撃機に無線で連絡し、水爆投下命令はただのミスだから引き返せ! と必死で説得を試みますが、軍規を叩き込まれた立派なパイロットたちは聞く耳を持ちません。

こうして解決の糸口もないまま、映画はすさまじいクライマックスへとなだれ込んでいきます。パイロットの奥さんが登場してやはり説得を試みるシーンはスリリングで迫力満点。映画の中のクライマックスのひとつでしょう。

とにかく予算がなかったらしく、物語はほとんど、大きなモニターのある作戦司令部と大統領の執務室のみで進んでいき、どちらもコンクリートが打ちっぱなしのシンプル極まりないセットなのですが、この無駄を排除した雰囲気が妙にリアルで生々しく、サスペンスを盛り上げるのに一役も二役も買っています。Img_0184 

悲劇へのカウントダウンが始まるなか、アメリカ大統領のとった苦渋の決断とは? これはもう驚きとしか言えませんね。『ミスト』に匹敵する驚愕のエンディングでしょう。

身勝手な意見で場を混乱させる識者や、いざというときに固まってしまう大佐、大統領から相手の心の動きまで訳してほしいと言われる若い通訳など、いろんなタイプの人間が集まってドラマを紡いでいくスタイルは、『十二人の怒れる男』でも見せたようにこの監督の真骨頂。とくに、大統領役を毅然と、かつ、人間臭さを醸しながら演じるヘンリー・フォンダがたまらなくいい。

妙なCGを使わなくてもいい映画は作れるというお手本のような傑作。ただし、邦題は映画の内容をまったく伝えていないので赤点。

評価:★★★★☆

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怪演とはこれいかに

大根プロファイル①

佐野史郎

Photo佐野史郎ってどうなんでしょう。世間一般的にはヘンタイ役を演じさせたら右に出る者はいない性格俳優として確固たる地位を築いているようですが。

が、私には、とんでもない大根にしか思えません。どんなに風格のある映画でも、魔太郎を彷彿とさせる胡散臭い目Img_0207つきのこの人がスクリーンにぬっと登場した刹那、薄っぺらな学芸会レベルの出し物と化してしまう。私はどんなチョイ役でも、佐野氏が出演していると聞いただけでそのドラマや映画を見る気が失せてしまいます。なんというか、この人をあえて抜擢した監督のセンスを疑ってしまう。

Img_0192ヘンタイ役をやらせたら云々というお決まりの口上も、なんのことはない、そういう役しか演じられないのでは。しかもキャラクター造りに奥行きがないので、どんな悪役を演じてもみんないっしょ。演技の幅がないにも程があるってもんです。

というわけで、日本でも五本の指に入る無敵のダイコンさんでしょう。『魔太郎が来る!』が映像化されるとしたら、主役を張るのはこの人以外には考えられないでしょうけど。

大根指数:★★★★★(満票!)

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猫ボクサー

Photo_9   

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猫の随に

猫の随に

 人はなぜ

 晩秋の淡い陽に照り映える稲穂のようなの毛の波間に

 顔をうずめ  Photo_3

 頬ずりし 

 陶酔するのか

 そこに何があるのだろう

 夢

 歓び

 そして

 束の間の悦楽Photo_4

 前に進むため

 捨ててきた何かを埋めるもの

 吸い込まれていく

 その畝を描く金色の毛の大海へと

 どこまでも

 どこまでも

 猫のまにまに

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チェンジリング

出し抜けシネマ論⑧~見覚えのある井戸掘り~

Photo_3 『チェンジリング』です。老いてなお盛んなクリント・イーストウッドが同名の映画を撮るようですが、こちらはピーター・メダックが1979年に生み出したオカルトホラーの傑作で、まったくの別物。

降ってわいたような事故で妻と娘を失った初老の音楽家が、過去と決別するために移り住んだ古い邸宅で、夜な夜な奇怪な音が鳴り響き、説明のつかない現象が頻発するようになる……いわゆる、幽霊屋敷もの。

こうした胡散臭いテーマを主軸に据えながら、常軌を逸した展開に苦笑させられることも、物語が破綻することPhoto_7 もなく、しかもきちんと怖がらせながら、初めから終りまで魅せてくれる映画というのはとても希少です。ぱっと思いつくのは『オーメン』か、お化けテイストはキューブリック風味で薄められていますが、『シャイニング』くらいでしょうか。

が、『チェンジリング』は怖いです、ゾッとします。うだるような夏の夜の納涼にもってこいでしょう。残虐シーンもないので、純度100パーセントの恐怖がたっぷりと味わえます。幼少の頃、おばあちゃんの家で「あなたの知らない世界」を見たときに感じたような、後ろに誰かが立っていそうな怖さに近いか。

Photo_9ところで、この映画にはある有名作品に酷似しているシーンが登場します。そう、『リング』です。ぶっちゃけ、『リング』の原典はこの映画じゃないでしょうかね。

それくらい、『チェンジリング』の井戸掘りのシーンは構図といい、状況設定といい、『リング』にそっくり。いや、『リング』がそっくりなのか。

残念ながら、ビデオは廃版のうえ、DVDでも再販されていないので、鑑賞するチャンスは少ないでしょうが、観ておいて損はないオカルトホラーの掘り出し物。「取り替え子」を意味するタイトルも興趣があって素晴らしいですね。

評価:★★★★

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フィクサー

出し抜けシネマ論⑦~看板に偽りあり!~

Photo_2十年ものの赤ワインのような作品です。ジョージ・クルーニーは渋くて格好いいですし。平素はB級ホラーやサスペンスなどを嗜好するトランスレーション猫ですが、こうした骨太なドラマも意外と好きだったりします。

しかし!Photo_10

「罪を消したければ彼に頼め」って宣伝文句はいかがなものかと。私はこのコピーを読んで、『フィクサー』という映画は、ジョージ・クルーニー扮する“揉み消し屋”がニヒルに暗躍する、社会が孕んだ皮肉を抉ってみせるダークなドラマかと、勝手にイメージを膨らませておりました。

が、当の“揉み消し屋”はトラブルをフィックス(揉み消す)するどころか、フィクサーという仕事に疲れ果て、嫌気が差し、足を洗いたがっているのです。社会の悪を揉み消しているのは、実際のところ、クルーニー氏ではなく、敵側の企業の弁護士だったりします。

Photo_12そういうわけで、裏稼業に生きる男の苦悩(というか日常)を描いた人間ドラマとして観れば、いささか実直すぎる嫌いはありますが、水準以上の佳作と言えるでしょう。私も嫌いじゃありません。主人公が馬に歩み寄っていくシーンは突飛というか、それがカギを握っていることに驚きましたが。

いずれにしても、この陳腐なコピーは反則でしょう。担当者は実際に自分の目で『フィクサー』を見ているのかと訝ってしまいます。安っぽいB級映画じゃないんですから、言葉には責任を持ちましょう。

評価:★★★☆

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くわっかかかかか

くわっかかかかか【kwakkakakakaka】

①(名詞で)やや大きめのカラスのことPhoto_13

例:にゃっと、にゃんや、にゃんからにゃここここ! くわっかかかかか

訳:ちょっと、このニンゲン的なセンスが炸裂した小窓のほうへ来てみなって! カラス、カラス、カラス

②(ふわふわボールなどに向けて)魅惑的なオブジェクトが転がっているが、手が届きそうで届かないため、悔しくてもどかしい

Photo_14例:にゃ、にゃ、にゃ! にょきょるぽにゃんぎゃらみちゃにゃしにゃごぽ! にゃん、にゃん、くわっつかかかかか

訳:あ、あ、あ! それってひょっとして、ニンゲンが勿体ぶってなかなか出してこないふわふわボールじゃないの~! 触りたいけど触れない、愛したいけど愛せない、もうちょい、もうちょい、もうちょっとなのに

③(俗語で)フィット感がいまいちの爪とぎのこと

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ンがんが

ンがんが【nganga】

①(ドアなどが開かずに)もどかしく思う気持ちPhoto_2

例:うんにゃら、にゃにゃにゃんぱ、がにゃ! ンがんが~

訳:さ~て、葉っぱ遊びが終わったところでお昼寝タイムかなって、うそ~ん! 寝室のドア、開いてないじゃないの~!!!

②転じて、やるせない心境

例:にょんにょがにゃらにゃ、にゃすみにゃいにゃら。ンがんがンがんが

訳:働いても働いても、休みもらえないっす。つらいなあせつないなあ

Photo_3③(俗語で)猫フードがふやけてしまい、なんとなくまずそうに見える状態

例:にゃっぱ、にゃろにゃろにゃにゃろんにゃ……ン、ン、ンがんが

訳:どら、小腹がすいたし楽しみにとっておいたゴハンでもいただきますかの……って、お、おい! ふやけまくりだっての

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ミスト

出し抜けシネマ論⑥~神々の怒り~

Photo 『ミスト』を観ました。

封切りを楽しみにしていた映画ですが、“スティーブン・キングがエンディングを絶賛!”という謳い文句に一抹の不安を感じたのは私だけでしょうか。正直なところ、B級テイスト溢れる素敵な触手がスクリーンに現れた刹那、ああ、『ドリーム・キャッチャー』の二の舞か、と背中に冷たいものが走りました。

しかし、さすがはフランク・ダラボン。怪物が出ないヒューマン系のキング作品とはいえ、『グリーンマイル』と『ショーシャンクの空に』という冗長な原作を見事に料理してみせた実績は伊達じゃなかった。今回もまた、原作の『霧』をはるかに超えてみせました。Photo_6

『ミスト』において、怪物の存在は料理のツマでしかありません。本当に醜いのは怪物ではなく人の心なのだ――まあ、珍しくもないテーマですが、フランク・ダラボンは、スーパーマーケットに閉じ込められた人々の心が壊れ、歪んでいく有様を、霧に潜む怪物と対比させながら、どっしりとした視線で描いていきます。

根底に流れているのは人間の愚かさ。戦争に手を染め、宗教におぼれ、そして、いかに人間が選択を誤るかということ。

壮絶なエンディングも、こうした愚かさを描き切ろうとした監督にとっては必然だったのでしょう。よかれと思ってやったことが裏目に出てしまったとして、誰がその判断ミスを責められようか。そのミスを愚かだと批難する人もまた愚かなのではないか。すべての結果には、状況があり、過程があり、原因がある。愚かさの本質とはいったい何であるのか――そうしたPhoto_5 痛々しい問いを、『ミスト』は投げかけてきます。エンドロールが流れる頃には、妙な触手のことなど遥かイスカンダルの彼方へ。

たしかに胸が苦しくなる幕切れですが、そこには目を背けられない、善悪という概念では割り切れない何かががあります。『グリーンマイル』や『ショーシャンクの空に』とはまた違ったかたちで心を震えさせる何かが。

『ミスト』は重厚なヒューマンドラマと、スティーブン・キング作品の持つ熱いB級魂が邂逅を果たした奇跡的な作品です。まずは、『霧』という危ない橋を貫禄たっぷりに渡り切ってみせたフランク・ダラボンの勇気と才能に、惜しみない拍手を送りたいですね。

評価:★★★★☆

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クマと炬燵

「クマがいるから見といて」

Img_0005 出がけに、妻はそう言った。鎮静剤で眠らせてあるけど、もうすぐ目を覚ます時間だから、と。炬燵でごろごろしていた私は妻に言われるがまま、ああ、わかった、と気のない返事をした。妻は出ていった。

炬燵から体を起してみた。狭いワンルーム(キューブタイプというのだろうか)だが、不思議と息苦しさは感じない。むしろ、どこまでも広がっていくような感覚を抱かせる形状だ。何の気なしにテーブルの向こうに眼をやると、黒い物体がうごめいていた。一段高くなった床の間に毛むくじゃらがImg_0006寝転んでいる。

あ、クマか。なるほど、鎮静剤が効いているらしい。かすかに息を洩らしながら、丸めた背中をこちらに向けて寝入っている。ふーん、クマって意外と小柄なんだな。全身がまっ黒な松の葉のような毛で覆われていた。それらが寝息に合わせてリズミカルに、ゆっくりと上下する。怖さはなかった。

Img_0008 と、クマがむくりと起き上った。鎮静剤が切れたのだろうか。それとも、端からそんなものは注射されていなかったのか。だとしたら、これは妻の陰謀だろうか? 

そうやって思いを巡らせていると、クマがくるりと振り向いた。少年時代に七夕の夜店で見かけた、ひょっとこの面に似た愛嬌のある顔をしていた。しかも、前歯が二本、ビーバーのように突き出ていた。

寝起きのせいだろうか、クマは私に気づいていない様子で、何のためらいもなく、慣れた所作で頭から炬燵の中にするすると入っていった。私は炬燵から足を出した。万が一、咬まれたりしたら大変だ。笑える顔をしていようがいまいが、腐ってもクマだ。私を暗殺するために送り込まれた刺客かもしれないのだ。

クマは炬燵の中をするすると這い進むと、反対側から(つまり、私がごろごImg_0007 ろしていた側から)にゅっと丸い顔を出した。

さすがに、クマは驚いたようだった。まさか、炬燵を出たら自分以外の動物がいるとは思わなかったのだろう。元来、クマは臆病な動物なのだ。丸い顔に光るつぶらな瞳はさらに丸くなり、突き出した前歯は小刻みに震えていた。

それにしても丸い顔だ。やはり、怖さはない。慣れてしまえば、クマも猫も変わらないのだろう。結局のところ、世界はひとつなのだ。

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断食のススメ

最終日をのぞいて曇天が続いた黄金週間も終了し、仕事に忙殺される日々が否応なしに舞い戻ってきました。

Img_0002それとはまるで関係なく、断食を敢行しました。なんでも、断食によって体内の余分な毒素が排出され、全身が浄化される効果がある(嫁談)とのこと。そういうわけで、イスラム教のラマダンのような宗教性や精神性とは無縁ながら、わが嫁の強い勧奨に屈して、しぶしぶ断食するハメに。何も知らないねこ~ずも、健康のためという御旗のもと、付き合わされました。

スパンは朝から翌日の朝まで。はじめての経験なので、プチ断食ですね。

朝食と昼食がごっちゃになりがちな在宅勤務ということもあって、朝メシを抜く程度なImg_0003 ら余裕のよっちゃんイカ。その勢いで昼メシ抜きもクリア。普段は朝・夜の二食のねこ~ずも、前夜の夜ゴハンが遅かったせいもあってか、腹が減った素振りすら見せません。

が、さすがに、夜になると腹が訴えてきますね。それはねこ~ずも同じのようで、我々が買い物に行って帰ってくるや、血相を変えてすっ飛んできました。そのまん丸マナコの訴えるところは「なんでゴハンが出てこないにゃ~」。ねこ~ずの無病息災を願ってのプチ断食でもあったのですが、さすがに少し哀れになったので、ややあってから、彼らはプチ断食終了~。夕飯を貪るようにかっくらってました。

いっぽうのニンゲンはスープだけ虚しくすすって断食を続行。

Img_0001ただ、頭がふらふらしたり、ジミヘンがアメリカ国歌を恍惚の表情で弾きまくっている幻覚が見えたりすることはありません。そういえば、昔は“ザ・ガマン”という番組で断食コンテストみたいなことをやっていましたが、彼らは確か、一週間くらい飲まず食わずだったような。

翌朝、起きてみると、腹がぺちゃんこになっていました。

このプチ断食によるリフレッシュ効果は推し量りかねますが、まあ、なんとなくスッキリしたImg_0004 ような気がしないでもありません。

いずれにしても、朝メシにホットケーキをばくばく食ったので、プチ断食の恩恵はすべて吐き出してしまったかも。

ニンゲン、一日くらいメシを抜いても、案外いけるもんですね。わが家の習慣にしてもいいかも、プチ断食。

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