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2008年6月

ジ・エンド

心を紡ぐうた③

And in the end

the love you take

is equal to the love you made

結局のところ

愛されるためには

それだけ愛さないとだめなんだよ

Photo史上最強のバンド、ビートルズ。

彼らについては雑誌や評論をはじめとして、学問のひとつとして多角的に研究した書物すら多数刊行されているので、いまさら何を語ってもすべて蛇足になってしまう感がある。なにしろ教科書にも載っているのだから。

ビートルズの音楽にジャンルの垣根は存在しない。がゆえ、ビートルズをロックという枠だけで語ろうとするのは愚かですらあるし、そもそも語り尽くせない。かといってフォークという枠だけでも捉えきれないし、ブルースっぽい曲もあるが純粋なブルースとはどこか趣が異なる。

結局のところ、ビートルズはビートルズでしかないのだ。Img_0335

そんな多彩で複雑な音楽的側面を持つビートルズだが、こと歌詞に関しては、拍子ぬけするほどシンプルだ。

とりわけ、赤盤時代の歌詞にはあの娘がどうしたとかこうしたとかいう、どこかの高校生がノートに落書きでもしてそうな初期衝動に満ちた詩が多く、圧倒的才能を感じさせるメロディやアレンジに比べるとやや見劣りがしてしまう。

もっとも、そうImg_0345した傾向はアルバムごとに改善されていき、とりわけ、ボブ・ディランに陶酔するようになったジョンの歌詞には鬱いだ心の内 側をえぐるようなものや、アバンギャルドな内容のものが増えていく。ジョージはインドへの想いを消え入るような繊細な声で歌い、ポールは曲を介して悲喜こもごものストーリーを紡いでみせる。リンゴは、どこまでいってもオクトパス・ガーデンだ。

冒頭のように歌われる“ジ・エンド”はそのタイトルどおり、ビートルズのラストアルバム『アビイ・ロード』の有終を飾るハードながらも美しい曲だ。

シンプルだが奥深い。簡単そうに見えて複雑。この詩からも、そんなビートルズの音楽哲学を感じ取ることができる。

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マーサ

心を紡ぐうた②

  How's your husband?

  And how's your kids?

  You know that I got married too.

  旦那はどうだい?

 子どもたちは?

 知ってるかな おれも結婚したんだよ

Photo_2酔いどれ詩人、トム・ウェイツ。

自分が初めてトムの歌に触れたのはたしか“ボーン・マシーン”だったと思う。得体の知れない男が吠えている異様なジャケットに惹かれて購入したのだが、くぐもった音を響かせる原始的なドラムの乱れ打ちに乗せて、もはやハスキーという概念を超えた、ただのノイズにしか聞こえない声が浮遊感たっぷりに絡んでくるという展開に、はっきりいって引いてしまったアルバムだ。

それがトラウマになってしばらく縁がなかったが、それから何年かして、きっかけは忘れたが、“クロージング・タイム”を購入した。

そして驚いた。トムがちゃんと歌っていて、ピアノを弾いていることに。メロディがあることImg_0302 に。“ボーン・マシーン”のトムとはまったく異なるトムがそこにいた。

兎にも角にも曲がいい。酔いどれ詩人と称されるだけあって歌詞もいい。トムの詩は共感を呼ぶという類のものではなく、街角でひっそりと繰り広げられる素朴なドラマを切り取った小粋な短編映画のような味わいがある。

“OL'55”では、ハイウェイを流れていくトラックのライトの眩しさを感じるし、冒頭のように歌われる“Martha”でも、昔の恋人に久し振りに電話をかけ、長距離だけどコストは気にしないでくれと告げる男の淋しげな姿が鮮やかに脳裏に浮かぶ。そうしたひとつひとつのモノクロのシーンが心に染み入ってくる。耳で聴き、目で聴くうた。

トム・ウェイツを聴くのに家のリビングで缶ビールは似合わない。寒くても雨が降っていても夜のベランダにそっと出て、水割りかロックを片手にしみじみと聴き入りたい。

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通報されるくらいに

心を紡ぐうた①

 あわてんなよ

 雨があがったからって

 いきなり晴れるわけもないさ

Photoシオンの詩はときに痛く、ときに優しく、ときに悲しい。あけっぴろげなその詩はシオンの生き様を映した鏡に他ならず、憂いを帯びただみ声によって運ばれるが、悲しいかな、使い捨てのポップソングに慣れ親しんだ多くの耳を素通りしてしまう。だが、幸運にもその声を掬い取ることができた耳には、これほどまで痛切に響いてくる詩はない。

『Sion Comes』はシオンのターニングポイントとなったアルバムだ。長年所属したテイチクから東芝に移籍しての第一弾ということもあって、かなり苦労して完成にこぎつけたようだが、結果的に、上質な曲が揃った極上のロックアルバムに仕上がった。ちなみにこの次の『Discharge』もよい。

で、『Sion Comes』のオープニングを颯爽と飾るのが“通報されるくらいに”だ。

その歌詞からはレコード会社が変わって心機一転、新しい時代に向かって突き進んでいくんだというシオンの強い決意がうかがえる。

長い雨があがっても、いきなり晴れることはない。まあ、あわてなくたってImg_0291いいさ。いずれ晴れるのだから。

苦しみ抜いて壁を越えたと感じたときほど、焦ってはいけない。そこまでいったらゆっくりと噛みしめるように歩いていけばいい。だんだんスピードを上げていけばいいんだ。

シオンにそう言われると、なんだかほっとする。

そして、シオンはこう結ぶ。

 ほら 通報されるくらいに

 ぶっとばすぜ

う~ん、痺れますなあ。

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親の七光はいずこへ

大根プロファイル②

三船史郎

Photoいわずとしれた大スター、“世界のミフネ”の本妻の息子さんです。

生まれながら三船敏郎と比べられるという業を背負わされるのは、どんな気分なんでしょうか。史郎氏も若いころは名優の遺伝子に導かれるまま、俳優として数本の映画に出演しましたが、やがて挫折したのか、映画プロデューサーに転身。偉大なる父が優雅に泳いでみせた銀幕の世界を生き抜いてきました。

そんな史郎氏が28年振りに出演したのが、黒澤明の遺した脚本を映画化した『雨あがる』。

主演は寺尾聰。“ルビーの指輪”の印象が強いですが、皺Img_0203ひとつの動きで心の機微を表現 してみせる希代の名優。脇を固める俳優陣も実力派がそろい、さわやかな感動に触れさせてくれる佳作でした。

そんなしっとりとした映画のなかにあって、どこぞの殿様を演じる三船史郎の演技だけが異彩を放っています。

私は彼が初めてセリフをしゃべった瞬間、ほんとうにずっこけました。これは何かの間違いでは、と。

俳優としてのブランクが長いとかそういう次元の話ではありません。この人はセリフの棒読みというテクニック(?)を極めています。その心の動きをいっさい感じさせない淡泊なしゃべりっぷりは、演技とはなんぞやという問いをガImg_0191ハハと笑い飛ばしてしまう豪胆さに満ちていて、逆にすがすがしいほど。そりゃまあ俳優を挫折するわな、と。

単純にヘタなんですね、芝居が。

そういうわけで、同じ史郎でも佐野史郎のダイコンっぷりとは似て非なるもの。あっちの演技はわざとらしさが鼻につくのですが、三船史郎の場合、お遊戯会で森の妖精を演じる我が子の姿に目を細めてしまうような、その手のほのぼの感を醸しているのが特徴。私はこの人が愛おしくてたまらない。

天国のオヤジも腰を抜かしたことでしょう。

大根指数:★★★★★(ただの素人でしょ、あなた……)

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