マーサ
心を紡ぐうた②
How's your husband?
And how's your kids?
You know that I got married too.
旦那はどうだい?
子どもたちは?
知ってるかな おれも結婚したんだよ
自分が初めてトムの歌に触れたのはたしか“ボーン・マシーン”だったと思う。得体の知れない男が吠えている異様なジャケットに惹かれて購入したのだが、くぐもった音を響かせる原始的なドラムの乱れ打ちに乗せて、もはやハスキーという概念を超えた、ただのノイズにしか聞こえない声が浮遊感たっぷりに絡んでくるという展開に、はっきりいって引いてしまったアルバムだ。
それがトラウマになってしばらく縁がなかったが、それから何年かして、きっかけは忘れたが、“クロージング・タイム”を購入した。
そして驚いた。トムがちゃんと歌っていて、ピアノを弾いていることに。メロディがあること
に。“ボーン・マシーン”のトムとはまったく異なるトムがそこにいた。
兎にも角にも曲がいい。酔いどれ詩人と称されるだけあって歌詞もいい。トムの詩は共感を呼ぶという類のものではなく、街角でひっそりと繰り広げられる素朴なドラマを切り取った小粋な短編映画のような味わいがある。
“OL'55”では、ハイウェイを流れていくトラックのライトの眩しさを感じるし、冒頭のように歌われる“Martha”でも、昔の恋人に久し振りに電話をかけ、長距離だけどコストは気にしないでくれと告げる男の淋しげな姿が鮮やかに脳裏に浮かぶ。そうしたひとつひとつのモノクロのシーンが心に染み入ってくる。耳で聴き、目で聴くうた。
トム・ウェイツを聴くのに家のリビングで缶ビールは似合わない。寒くても雨が降っていても夜のベランダにそっと出て、水割りかロックを片手にしみじみと聴き入りたい。
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コメント
これは・・・もう傑作中の傑作ですね。あのくしゃくしゃ顔のへんてこなオヤジがなんで、こんな歌をかけるのか!かっこよすぎますよ。特にファースト、セカンド、サード、文句なしですね。私は北米にいるので、夜のハイウェイソングとして『OL`55』は絶対に欠かせません。あの当時の西海岸で突発的に出没したのも、彼の面白い部分です。デットか、イーグルスかみたいな時代でしたのにねー。
投稿 Yukon Jack | 2008年6月 8日 (日) 04時56分
『Ol'55』は問答無用の名曲ですなあ。来日しませんかね、この人。まず実現しないだろうなあ。
投稿 とら猫 | 2008年6月 8日 (日) 11時41分