パジャマ・イン・小田原・パート3
淡い期待を胸に、駅の連絡通路に虚しく立ち並ぶ公衆電話へとつかつか歩を進め、これに正対し、買ったばかりのテレフォンカードを挿入、というのも、鍵がないことに気づいて街をぐるぐるしてようやく駅でペイフォンを見つけて電話をかけたとき、恥ずかしながら、私、軽くパニくっていたというか、財布に入っていた数枚の10円硬貨が底を尽きると、釣銭の貰えない100円硬貨を惜しげもなくじゃんじゃん投入、大フィーバーを演じ、どえらい出費を食らっていたので、いったん冷静になった頭でテレフォンカードをコンビニにて購入した次第。
賢いね、まったく。これでもう、浜松だろうか北海道だろうがジンバブエだろうが電話できるぜ。へへ。勝った。
で、母に電話してみると、先刻まで哀れな子羊を仁愛の眼で見守ってくれていた神さんはやぼ用ができて隣町に行ってしまったのか、母から、
やっぱ、嫁のナンバー、探したけど見つからないわ。ごめんね。
との返事が。がーん、がーん、がーん。虚ろに反響する心の鐘の音。
参った。マジ、参った。がちょーん。
私、パジャマ姿のまま、四度、途方に暮れた。憔悴しきった表情も手伝って、傍目には、痛飲し朝帰りののち、おっかない嫁に家を蹴り出されたハゲおやじにしか見えなかったであろう。
鉄板と思われた「母親にすがりつき作戦」がもろくも頓挫し、残された選択肢はいくつかあったが、そのどれも一長一短で決め手に欠けた。
①川崎に住まう、嫁の同僚のマンションをアポなし訪問し、嫁の携帯ナンバーを伝授してもらう。(リスク:土曜日なので、かかる同僚が外出している可能性が高い)
②鍵屋に頼む。(リスク:以前、夜中に、トイレ詰まりを解消してもらうべく、同系の業者を呼んだことがあったが、このとき、電話では5000円と言ったくせに、いざ来てみたら、最新のトイレ詰まり解消装置を使わないとムリと放言され、結局、20,000円以上請求された苦い記憶を引き合いに出すまでもなく、こうした鍵屋は法外な技術料を請求してくる恐れがある)
③パジャマ姿のまま、ビジネスホテルに泊まる。(リスク:ねこーずにご飯を与えられないため、嫁にコテンパンに叱責される)
④パジャマ姿のまま、野営。(リスク:そのままあっちの世界にふらふらと流れていってしまう可能性がある)
マジ、どうしよう、と脳漿を絞ってみたが、各チョイスにつきまとうリスクを考えると、なかなか踏ん切りがつかない。
気がつくと、私、ほとんど無意識のうちに、再びテレフォンカードを挿入し受話器を手に取り、母に電話していた。
と、神が隣町のやぼ用を終えて戻ってきた。
あったわ、ナンバー。メモが見つかったわ、と、母。
ありがとう、お母さん。ぼくを産んでくれてありがとう。これからはまっとうに人生を歩んでいきます。人という字は1と1が支えあって……
嫁の携帯ナンバーさえ入手すれば、こっちのもの。さっきコンビニで購入した海苔巻をほおばって誰にともなく余裕を見せつけ、人心地ついたところで、電話した。
しかし、すでに思考の切れ味が復活し、勝利を確信していた私のコンピュータは、たちまちのうちに最善策を弾き出した。
二人の中間地点である小田原にて落ち合い、そこで鍵を受け取るという寸法である。嫁には静岡から1時間かけて新幹線で戻ってもらい、私は車で1時間かけて小田原へ向かう。
実に経済的で無駄のない作戦と言えよう。
パジャマ姿のままサービスエリアでコーヒーを購入し、それを飲みつつ、パジャマ姿のまま料金所で高速代をペイし、パジャマ姿で小田原駅に到着すると、パジャマ姿のまま悠揚迫らぬ足取りでずんずんと構内に入っていき、新幹線口に到達、鼻息も荒く、鍵を受け取った。
心のなかでロッキーのテーマ曲が流れた。
俺は勝った、勝ったんだ。
パジャマ姿の私、午後の予定はすべてキャンセルとなった。うう。
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コメント
飯抜きにならなくて良かったニャ!
投稿: けろ号 | 2008年11月10日 (月) 09時22分
鍵屋だろー、普通・・・・ ぜったいに、トータルで考えたら安いよ、、、、ガス代、高速代、労力、無駄になる時間、嫁の新幹線代、嫁の労力、、、、あーだ、こーだで、かーちゃん、嫁に迷惑かけましたのー、
投稿: Yukon Jack | 2008年11月10日 (月) 17時09分
鍵屋はね、ろっくんろーるじゃないんですよ。
投稿: とら猫 | 2008年11月10日 (月) 22時54分
初めまして!
猫里親掲示板>ホレイショ君>パピちゃんのうきっきき~日記から
こちらのBLOGで、「パジャマ・イン・小田原・パート1~3」を拝見いたしました。
無事、家に入ることができて本当によかったですね
残業でへとへとだったのですが、あまりにもお話が面白く、大爆笑(失礼!)
させていただき、元気を取り戻した次第です。
ありがとうございました
投稿: Nina | 2008年11月10日 (月) 22時55分
我ら夫婦の失態によって元気になってくれる人がいるのなら、鍵なんかいらないですね! もう、捨てちゃいます、こんなもの! わーい。里親探しのほうも、よろしくお願いします。
投稿: とら猫 | 2008年11月11日 (火) 09時32分