ナツメグ歩記・頁4
12時00分
日本動物高度医療センター
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日本動物高度医療センターは多摩川沿いにあった。
近代的なファサードはおよそ動物病院らしくなく、研究施設のような佇まい。自動ドアも動物が飛び出さないよう二重になっていて抜かりがない。
一流ホテルのフロントと見紛うほど重厚な受付。ゆったりとした清潔な
ロビーは、そこいらの総合病院(ニンゲン用)よりも立派なくらいだ。
ふと見ると、優しい眼をした大柄なラブラドールがご主人の傍らにちょこんと座っていた。特に悪いところはなさそうだが、ここへ来る以上、外見からは判断できない重い病気を抱えているのだろう。
ナツメグと同じように。
問診票に必要事項を書き込み、ロビーで呆然と待つうちに、三番の診察室に呼ばれた。
中に入ると、研究員風の恰幅のよい先生が待っていた。胸のネームタグに物々しい「脳神経科」の文字が見えた。
診察が始まった。
トンカチのような器具でナツメグの冷たい脚をコンコンとたたきながら、先生が、まずいね、とつぶやく。そしてまた、まずいね、と。
確かにまずかった。今や、ナツメグの麻痺は上半身に及んでいた。持ち前の闘争心もついに底をついたのか、診察台の上で紐の切れた操り人形のようにぺしゃんこになっている。左手がほとんど動いていなかった。
さらに眼の反応も鈍っていた。先生が眼の前で手を振っても眼をつぶろうと
しない。黒目がまったく手の動きを追わなかった。
麻痺がどんどん進んでいた。昨日の朝までは元気だったのに、今ではもう首を動かすこともままならない。神のいたずらと呼ぶには過酷すぎた。
「やはり脳でしょう。水頭症か、腫瘍のせいか。MRIを撮ってみないことには何とも言えませんが、非常に危険な状態であることは確かです。決断を急がれたほうがいいでしょう」
決断。
そう、ニンゲンと違って動物のMRIは麻酔をかけて行う。ミリ単位での精密さが要求されるため、じっとしていられない動物を眠らせる必要があった。
ただ、場合によっては眠りから醒めないことがある。
要するに、死ぬ、ということである。
MRIには通常でも死のリスクが付きまとう。そこへさして、今のナツメグの状態は傍目にも穏やかでない。危
篤に近い。麻酔から醒めない確率はぐんと跳ね上がる。
しかも、仮に原因が見つかり、運よく手術でそれを除去できたとしても、四肢の麻痺は残る公算が強いという。
だが、放っておけばナツメグはまず助からない。先生の顔にはっきりとそう書いてあった。
MRIを撮るべきなのか?
私たちは難しい決断を迫られていた。
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コメント
続きまだ?
投稿: 嫁 | 2009年11月13日 (金) 09時27分
嫁さん、だめです、旦那さんはマイペースなので^^
でも
続きまだ~?
投稿: じゅんこ | 2009年11月13日 (金) 17時38分
嫁さん。
書こうと思ってたら今週はもう終わりか~。
投稿: とら猫 | 2009年11月13日 (金) 18時05分
じゅんこさん。
そんなに読者がいるとも思えないんですが、なるたけ早く書きますね~。もうちょい待ってくだされ。
投稿: とら猫 | 2009年11月13日 (金) 18時06分