親の七光はいずこへ
大根プロファイル②
三船史郎
いわずとしれた大スター、“世界のミフネ”の本妻の息子さんです。
生まれながら三船敏郎と比べられるという業を背負わされるのは、どんな気分なんでしょうか。史郎氏も若いころは名優の遺伝子に導かれるまま、俳優として数本の映画に出演しましたが、やがて挫折したのか、映画プロデューサーに転身。偉大なる父が優雅に泳いでみせた銀幕の世界を生き抜いてきました。
そんな史郎氏が28年振りに出演したのが、黒澤明の遺した脚本を映画化した『雨あがる』。
主演は寺尾聰。“ルビーの指輪”の印象が強いですが、皺
ひとつの動きで心の機微を表現 してみせる希代の名優。脇を固める俳優陣も実力派がそろい、さわやかな感動に触れさせてくれる佳作でした。
そんなしっとりとした映画のなかにあって、どこぞの殿様を演じる三船史郎の演技だけが異彩を放っています。
私は彼が初めてセリフをしゃべった瞬間、ほんとうにずっこけました。これは何かの間違いでは、と。
俳優としてのブランクが長いとかそういう次元の話ではありません。この人はセリフの棒読みというテクニック(?)を極めています。その心の動きをいっさい感じさせない淡泊なしゃべりっぷりは、演技とはなんぞやという問いをガ
ハハと笑い飛ばしてしまう豪胆さに満ちていて、逆にすがすがしいほど。そりゃまあ俳優を挫折するわな、と。
単純にヘタなんですね、芝居が。
そういうわけで、同じ史郎でも佐野史郎のダイコンっぷりとは似て非なるもの。あっちの演技はわざとらしさが鼻につくのですが、三船史郎の場合、お遊戯会で森の妖精を演じる我が子の姿に目を細めてしまうような、その手のほのぼの感を醸しているのが特徴。私はこの人が愛おしくてたまらない。
天国のオヤジも腰を抜かしたことでしょう。
大根指数:★★★★★(ただの素人でしょ、あなた……)
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