猫ランドへの道、第五章
そう、マネーである。
お前それ、考える順番が逆やろ、金のことから先に考えんかね、フツー、なんて突っ込みが飛んできそうだが、私の人生、終始こんな調子なので。
いや、マネーについて考えていないわけではなかった。
つまり、「猫ランド」にふさわしい物件と運命的に出会ったその暁には、我が
家にとって唯一かつ最大の資産であるマンションを売っ払っちまえばよくなくなくなくなくね? とヤング風に漠然と考えていたのだが、
そう簡単に売れるわけがないのである。
マンション購入者のご多分に漏れず、我が家も住宅ローンを組んでせっせと月賦を銀行さんにお納めしている。で、住宅ローンが組めたってことは、銀行さんは当マンションに抵当権を打っているのだ。
つまり、このマンションはウン千万円を借りるための質草であって、自分のものでありながら、同時に、銀行さんのものでもある。私がしがない翻訳業に行き詰まり、嫁がレイオフでも食らってローンの支払いが滞るようなことがあれば、銀行さんはすぐさま我が家を借金のカタに差し押さえて、帳尻を合わせようとするだろう。鬼め。
いくら私が「猫ランド」という崇高なるビジョンの実現のため、マンションを売りたいと銀行に土下座して頼み込んでも、行員に死んだ魚のような眼で睨まれ、水をぶっかけれらたあげく塩を撒かれるのがオチだ。
このことを我ら二人とも見落としていた。蓋し、アホである。節穴どころか、我らの眼には土星のリングみたいな大穴が開いている。
夫婦そろって力石徹のようにまっ白になったが、ものは考えようだ。最初から抵当権という壁に気づいてたら、そもそも、「猫ランド」なんていう途方もないアイデアは浮かんでこなかったかもしれぬ。
それに、これは我らにとってもっとも都合のよい夢のような最短ルートが断たれただけの話で、これでようやく、人並みのスタート地点に立てたのではないか。
だいたい、我が家の資産価値って幾らくらいなんだ?
マンションが予想外の高値で売れるなら、ローンも返済できて抵当権も消滅する。余った金を「猫ランド」資金に充てることも可能だ。
いずれにしても、知っておいて損はない。
そこで、インターネットでマンションの無料査定を頼んでみた。
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と、この「寮」の闇を掘り下げていったら切りがないので、これについてはまた改めて語りつくしたい。





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